
こんにちは!axis.代表の松下です。
前回はライティングの基本となる「Direction(光の方向)」について解説しました。 今回はその続きとして、映像の“質感”を決定づける非常に重要な要素、「Quality(光の質)」について深掘りしていきたいと思います。
今回も、僕がバイブル的に参考にしている海外のライティング解説動画を基に、現場視点で整理していきます。
まずは、前回の復習も兼ねてこちらの動画の「Quality」のパート(10:03〜)に注目してみてください。
映像を見て、「なんだか柔らかくて上質な感じがする」のか、「エッジが効いていて力強い感じがする」のか。その印象の正体は、この「光の質」にあります。
光の「質」とは何か?
ライティングにおける「質」とは、一言でいえば「影の境界線の見え方」のことです。 大きく分けて2つの状態があります。
- Hard Light(硬い光): 影の縁がくっきりしており、コントラストが強い。
- Soft Light(柔らかい光): 影の縁がぼやけて、光から影へなだらかに変化する。
多くのクリエイターが「質感が良い映像にしたい」と思ったとき、まず目指すのがこの「柔らかい光(ソフトライト)」です。しかし、ただ柔らかくすれば良いというわけではなく、そこには明確な理論と使い分けが存在します。
柔らかさを決める「相対的サイズ」の法則
「どうすれば光を柔らかくできるのか?」 多くの人が「とりあえずソフトボックスを付ける」と考えがちですが、本質はソフトボックスの有無ではなく、「被写体から見た光源のサイズ」にあります。
動画内でも説明されている通り、ルールは非常にシンプルです。
被写体に対して光源が大きければ大きいほど、光は柔らかくなる。
画像のように被写体に対して相対的にライトが大きくなれば影は柔らかくなります。
ここで面白いのが「相対的」という考え方です。 例えば「太陽」は巨大な光源ですが、地球からは小さな点にしか見えません。だから、雲のない晴天の太陽光は、影がくっきり出る「硬い光」になります。




上の2枚の画像は同じライトを遠くから(左画像)と近くから(右画像)の比較です。
単純にライトを近づけた方が影のニュアンスが柔らかくなっていると思います。
ただ、ここまでライトを近づけるのは被写体にかなりのストレスがあると思うので現実的ではないです。。


上の画像はライトに拡散を目的とした機材を被写体との間に挟んだ物です。
ライトソースが、四角形(120cm*120cm)まで大きくなり、被写体に対して大きくなる=光が柔らかくなる効果が発揮されていると思います。
このように、大きな白い布(ディフュージョン)を通して光源の面積を擬似的に大きくしてあげれば、光は驚くほど柔らかくなります。
「もっと光を柔らかくしたい」と思ったら、ライトを被写体に近づける、あるいはディフュージョン(布やフィルター)のサイズを大きくする。これが最も手っ取り早く、確実な方法です。
目的別:ソフトとハードの使い分け
ライティングは「正解」を探す作業ではなく、「どう見せたいか」という目的に合わせて選択する作業です。
ソフトな光(Soft Light)=影のグラデーションが滑らかな光
【主な使用例:インタビュー、ブランド映像、ビューティー撮影】 人物を誠実、かつ魅力的に見せたいときはソフトライトが基本です。 肌の凹凸やシワに光が回り込むため、肌が滑らかで美しく見えます。また、視聴者に安心感や優しさを与える効果があるため、企業インタビューや対談動画ではまず間違いのない選択です。

インタビュー映像|https://axis-ov-films.co.jp/works/293/
こういった映像には被写体の肌や映像の質感を高めるために光を拡散されるようなライティングを使用しています。
硬い光(Hard Light)=影のグラデーションが明暗ではっきり分かれる光
【主な使用例:ドラマチックな演出、夏の日差し、夕暮れ、サスペンス】 あえて影を強調し、力強さや緊張感、ノスタルジーを表現したいときに使います。 例えば、真夏のギラギラした太陽の下でのシーンや、キャラクターの内面的な葛藤を「光と影の強いコントラスト」で表現したい場合、ハードライトは非常に強力な武器になります。

ハードライト作例|https://axis-ov-films.co.jp/works/1141/
上記の映像の6:00くらいは、夏の西陽をイメージして硬い光を被写体に当てています。
現場でどう「質」をコントロールするか
僕らのような少人数の現場では、大きな機材を何台も持ち込むのが難しいこともあります。 そんな時、僕は以下の優先順位で調整しています。
- ディフュージョンを活用する: ライトの前に拡散できる物(ソフトボックス、トレーシングペーパー、Muslinなどの布)を挟み光源の面積を広げる。
- バウンスさせる: ライトを直接当てず、白い壁やカポックに反射させて「壁全体を光源」にする。
- 距離を調整する: ライトを近づけて相対的に大きくする(ただし、明るさが変わるので露出調整が必要)。
まとめ
ライティングの第2ステップ「Quality(光の質)」。
- 影の境界線をコントロールすること。
- 光源を(相対的に)大きくすれば柔らかくなる。
- 綺麗に見せたいなら「ソフト」、感情を揺さぶりたいなら「ハード」。
この「質」の概念が頭に入ると、Direction(方向)と組み合わせて、より意図を持った絵作りができるようになります。
次は、映像に温度感や空気感を与える「Color(光の色)」についてお話ししようと思います。
では、また!
