
前回は、このシリーズがどんな立ち位置の記事なのか、そしてどんな人に向けて書いていくのかについてお話ししました。
クリエイティブなことが好きで、いつか仕事にしたいと思っている人に向けて、未経験からどう積み上げていくのかを、できるだけ現実的な目線で書いていくシリーズです。
今回はその続きとして、じゃあ最初に何をするべきなのか について書いていきます。
クリエイティブを仕事にしたいと思ったとき、多くの人がまず気になるのは、機材を買うことなのか、作品を作ることなのか、名刺やホームページを用意することなのか、といった“最初の一歩”だと思います。
実際、調べればいろんな情報が出てきますし、何から手をつければいいのかわからなくなることも多いはずです。
ただ、僕自身の経験を振り返ってみると、最初にやるべきことは、いわゆる表に見える準備ではありませんでした。
むしろもっと手前にある、でもすごく大事なことがあったと思っています。
今回は、そのあたりも含めて、僕なりに考える「最初にやるべきこと」を書いてみようと思います。
最初にぶつかるのは「で、結局何から始めればいいんだろう?」という疑問だと思います。
カメラを買うべきなのか。
編集を覚えるべきなのか。
名刺を作るべきなのか。
ホームページを作るべきなのか。
SNSを頑張るべきなのか。
たぶん、いわゆる“正しそうな答え”はいくらでも出てきます。
実際、そういったことも仕事にしていく上では必要になってくると思います。
でも、今回はあえて、そういうありきたりなところとは少し違う話を書いてみたいと思います。
というのも、僕自身が振り返ったときに、「最初にやるべきだったこと」は、カメラを買うことでも、名刺を作ることでも、ホームページを作ることでもなかったからです。
僕が一番最初に大事だと思っているのは、クリエイティブ以外で収入を作ること。
もっと言うと、生活を安定させて、クリエイティブに集中できる環境を作ることです。
少し意外に思われるかもしれません。
でも、僕はここがかなり大事だと思っています。
最初に必要なのは、勢いより土台
映像や写真、デザインみたいなクリエイティブの仕事って、外から見ると華やかに見えることが多いです。
でも実際には、始めてすぐに安定してお金になるものではないと思っています。
かなり運がよかったり、すぐにどこかの制作現場に入れたり、いい縁に恵まれたりすれば、早い段階で仕事にできることもあるかもしれません。
でも、ほとんどの場合、そんなにすぐ食べていけるものではありません。
しかも映像は、始めるにも続けるにも意外とお金がかかります。
カメラ、レンズ、編集用のパソコン、ソフト、記録メディア、移動費。
やろうと思えば思うほど、必要なものはどんどん増えていきます。
そういう中で、最初からクリエイティブだけに全振りしてしまうと、収入がないまま出費だけが増えていく状態になりやすい。
そうなると、生活の不安が大きくなって、気持ちにも余裕がなくなってしまいます。
そして、余裕がない状態では、いいものを作るのも難しくなるし、何より続けること自体が苦しくなっていきます。
もちろん、背水の陣で飛び込むやり方が合う人もいると思います。
全部を捨てて、そこに賭けることで前に進める人もいるかもしれません。
でも、僕は少なくともこの仕事に関しては、一発逆転を狙うものではないと思っています。
クリエイティブを仕事にするというのは、何かを当てて一気に人生を変えるというより、少しずつ積み上げながら、最終的にそれで食べていける状態を作っていくことの方が大事です。
だからこそ、最初に必要なのは勢いだけで飛び込むことじゃなくて、ちゃんと続けられる土台を作ること。
ご飯が食べられて、寝る場所があって、最低限の生活が守られていること。
その上で、時間やお金を少しずつクリエイティブに振っていけること。
遠回りに見えるかもしれません。
でも僕は、これがいちばん現実的で、結果的に確実な方法だと思っています。
僕自身、最初は生活コストを下げるところから始めた
僕はオーストラリアから帰国したあと、関西に出てきて、そこから少しずつ映像クリエイターとしての道を作っていきました。
でも、そのときにいきなり理想の形で始めたわけではありません。
神戸に出てきたとき、あえて一人暮らしはしませんでした。
まずは生活コストをできるだけ下げることを優先して、親戚の家に間借りするような形で住まわせてもらっていました。
……と書くと、まだ少し整った話に聞こえるんですが、実際は母の妹の元旦那の家です。
おばさんの元旦那。
もう説明の時点でだいぶややこしいんですが、当然いまは血縁関係もほぼないに等しいです。
今思うと、よくそこに「住ませてください」と言えたなと思います。
でも、その方がたまたま便利な場所に住んでいて、「もうお願いします」と頭を下げて、そこからスタートしました。
当時は29歳か30歳くらいだったので、世間的に見たら「その年齢で何をしているんだろう」と思われてもおかしくなかったと思います。
自分でも、客観的に見たらなかなか不思議な状況だなとは思っていました。


写真は当時の部屋です。狭い空間でライティングの練習などをしていました。笑
すごく貪欲にいろんなことを吸収していた時かもしれません。
ただ、そのとき自分の中で優先したかったのは、見栄を張ることよりも、まずクリエイティブに使える余白を作ることでした。
ちゃんと生活できること。
そのうえで、少しでも時間とお金を次のステップに振れること。
そこを優先したかったんです。
アルバイトをしながら、次の準備をしていた
もちろん、その間は何もしなかったわけではありません。
前職に近い飲食の仕事をアルバイトという形で続けながら、生活費を確保していました。
昼や夜は働いて、それ以外の時間で映像の勉強をしたり、準備をしたり、少しずつクリエイティブの方へ進んでいく。
そんな時期でした。

正直、あの頃は周りから見たら、いい年をしてフリーターになっているように見えたと思います。
実際に、少しバカにするようなことを言われたり、「何やってるの?」みたいな反応をされることもありました。
もちろん、ムカつくことはありました。
でも、その一方で、自分の中ではちゃんと理由がありました。
ただ流されてそうなっていたわけじゃなくて、自分なりに次に進むための準備をしている感覚があったんです。
遠回りに見えても、これは自分のやりたいことに向かうための時間なんだと思えていたので、あまりそこは気にしすぎずにやっていました。
今振り返ると、あの時期にやっていたことはかなり地味です。
見た目にかっこいい話でもないし、SNSに載せたくなるような華やかな時期でもありません。
でも、ああいう地味で、少し不格好な時期があったからこそ、今につながっているとも思っています。


休憩時間などにお店の撮影の仕方や、料理などを撮影しながら、勉強していました。
かっこいい始め方じゃなくていい
何かを始めるときって、つい“かっこいいスタート”を想像してしまうことがあると思います。
お気に入りの機材を揃えて、肩書きをつけて、綺麗なホームページを作って、自分の仕事をスタートさせる。
もちろん、そういう形に憧れる気持ちはよくわかります。
でも実際は、そんなに綺麗な始まり方じゃなくてもいいと思っています。
むしろ最初は、不格好でもいいから続けられる形を作ることの方が大事です。
生活費を確保しながらでもいい。
家賃を抑えてでもいい。
実家に戻るのでもいいし、生活水準を一度下げるのでもいい。
まずは、自分がクリエイティブを続けられる状態を作ること。
そこが整っていれば、焦らず勉強できます。
試行錯誤する余裕も持てます。
すぐに結果が出なくても、もう少し続けてみようと思えます。
逆に、生活そのものが不安定な状態で始めてしまうと、うまくいかなかった時に、クリエイティブそのものを続けられなくなる可能性もあります。
だから僕は、最初にやるべきこととして、カメラや名刺よりも先に、生活を安定させること、そしてクリエイティブに集中できる環境を作ることを挙げたいです。
まずは、続けられるスタートを作る
クリエイティブを仕事にしたいと思ったとき、最初に必要なのは、目立つことでも、格好をつけることでもありません。
まずは、続けられるスタートを作ること。
自分がちゃんと生活できること。
その上で、時間とお金と気持ちの余白を、少しずつクリエイティブに注いでいくこと。
僕はそれが、結果的にいちばん強い始め方だったと思っています。
遠回りに見えるかもしれません。
でも、この仕事は短距離走ではなくて、長く積み上げていくものです。
だからこそ最初は、勢いよりも土台。
一発逆転よりも、続けられる形を作ること。
そこを整えることが、あとからすごく効いてくると思います。
次回は、この土台を作った上で、じゃあ実際に何を始めていくのか。
作品づくりやポートフォリオにつながる「小さく作ること」について、もう少し具体的に書いていこうと思います。