
はじめに:話を聞く。でも、全部は入れない
Pre Production(以下、プリプロ)で一番大事なのは、クライアントの話をよく聞いて、
その会社のこと、課題のことをこちら側がちゃんと理解することです。
ただ、丁寧に聞けば聞くほど「これも大事」「あれも入れたい」と要素が増えがちです。
そのまま足し算を続けると、結局「何の映像かわからない」状態になります。
だからプロとして大事なのは、要望を全部入れることではなくて、
- 今回、何を伝えるのか
- 今回、何は伝えないのか
ここを決めて、一本筋の通った映像にすることです。
Step1|目的・KPIを決める(何のための映像?)
まず決めるのは「目的」です。
ここが曖昧だと、構成も映像表現も、判断が全部ふわっとします。
目的を決めるときは、次の3点をセットで整理するとズレにくいです。
- 誰に見てもらうのか(ターゲット)
- 視聴後にどう動いてほしいのか(行動)
- その結果、何を達成したいのか(KPI)
例:採用なら「応募」、サービス紹介なら「問い合わせ」など。
この段階で、クライアントの「作りたい映像」ではなく、
「解決したい課題」に焦点を合わせます。
ここが揃うと、プリプロが一気に進めやすくなります。
Step2|納品仕様を決める(尺・縦横・字幕)
次に決めるのは「完成形の条件」です。
ここを後回しにすると、編集の終盤で崩れます。
最低限、次は先に決めておくのがおすすめです。
- 尺(15秒/60秒/3分など)
- 縦横(16:9/9:16)
- 字幕(あり/なし、言語)
- 音の前提(音ありで見るのか、音なしでも伝えるのか)
- 使用場所(Web/SNS/展示会など)
たとえば、展示会で音が聞こえない想定なら、
「映像だけで伝わる構成」に寄せる必要があります。
ここが決まると、撮影で「何が必要か」が具体的になります。
Step3|メッセージを一文にする(背骨を作る)
映像の背骨を作ります。
伝えたいことが多いときほど、ここを強制的に短くします。
テンプレとしてはこれです。
「この映像は、〇〇に向けて、△△を伝える」
この一文があると、
- 入れるべき内容
- 入れなくていい内容
を判断しやすくなります。
逆に、この一文が無いと、整理されていない要素が残って判断に迷いが生じることがあります。
Step3.5|「言わないこと」を決める(映像を強くする)
ここがプリプロの核心です。
映像だけではないのですが、、「全部言う」と逆に伝わらなくなります。
大事なのは 伝えることを増やすより、伝えることを絞ること です。
ここでは、次の2つを決めます。
- 今回の映像で「伝えること」(1〜2個)
- 今回の映像で「言わないこと」(別媒体や次回に回す)
たとえば会社紹介なら、
- 伝える:何の会社か/信頼できる理由
- 言わない:沿革の細かい話/サービス仕様の詳細/社員紹介の深掘り
「言わない」を決めると、構成も撮影も編集も迷わなくなります。
Step4|構成を作る(伝わる順番を設計する)
ここから「どう見せるか」に入ります。
構成作りで意識しているのは、
話す順番ではなく、理解される順番 です。
おすすめは、次のどちらかの型で組むことです。
- 課題 → 解決 → 根拠 → 事例 → CTA
- 空気感 → 何をしているか → 強み → CTA
この段階では、綺麗な台本よりも「全体の流れ」が大事です。
大枠が固まれば、細部はあとで調整できます。
Step4.5|ムードボードで“完成の雰囲気”を揃える

構成が決まったら、次は「雰囲気の共有」です。
言葉だけで「かっこいい」「上質」「誠実」と言っても、
人によってイメージがズレます。
そこでムードボードを作ります。
ムードボードには、たとえばこんな要素を入れます。
- 色味(暖色/寒色、コントラスト)
- 光(硬い/柔らかい、逆光気味など)
- カメラ距離(寄り/引き、余白)
- テンポ(ゆっくり/速い)
- テロップの雰囲気(有無、サイズ感)
- 参考映像(スクショでもOK)
そしてクライアントに、これだけ確認します。
「この雰囲気で完成イメージは合っていますか?」
ここで合意が取れると、撮影と編集のブレが減ります。
クライアントの担当者も同じ完成系が見えているのが理想です。
Step5|絵コンテ or ショットリスト化(撮るものを決める)

構成と雰囲気が揃ったら、次は「撮るもの」を決めます。
ここでやることは、シンプルに言うと、
- 必須カット(Aロール)
- 補強カット(Bロール)
- つなぎ(インサートなど)
を洗い出すことです。
絵コンテでも、ショットリストでもどちらでもいいです。
大事なのは「漏れがない」こと。
特にインタビュー系は、
言葉だけで成立させないように、Bロールを多めに設計しておくと魅力的になります。
Step6|3Dライティングシミュレーション(光を設計する)

ショットが決まったら、光を設計します。
3Dシミュレーションを使うと、事前に
- 影が強すぎないか
- 背景と被写体が分離して見えるか
- スタンドをどこに立てるか
などを確認できます。
インタビューや商品撮影など、
「光で印象が決まる」案件ほど効果が大きいです。
当日の試行錯誤が減って、設営も早くなります。
前編まとめ
前編は「完成形を固める工程」です。
クライアントとしっかり会話を重ね、撮影時には完成系が見えていることが理想です。
準備はしっかりしていると、急なアクシデントにも対応できる可能性が上がります。
次回は実際の撮影までの部分を書いていきたいと思います。
では、また。