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2025/10/21

影を活かすためのライティングの工夫 ― ネガティブフィルという発想

こんにちは!axis.代表の松下です。
今日はライティングについてテクニックを書いていこうと思います!

「ライティング」と聞くと、多くの人は“光を足す”ことを想像するかと思います。
でも、映像を本当に美しく見せるには、光を引くこと――つまり「ネガティブフィル(Negative Fill)」の考え方が欠かせません。

ネガティブフィルとは

ネガティブフィルとは、
光を“遮る”ことで被写体の影を意図的に強め、
映像にコントラストと立体感を与える手法です。

たとえば、窓際で撮影しているとき。
自然光が部屋の中いっぱいに回り込み、被写体の顔がどこから見ても明るく見える――
一見理想的ですが、実はこの状態だと顔に奥行きがなく、のっぺりとした印象になってしまいます。

そこで登場するのがネガティブフィル。
被写体の反対側(光が回り込みすぎている側)に黒い布などを立てて、あえて光を吸収させるのです。

これにより、顔の片側に自然な影が生まれ、
「光の方向性」がはっきりと見えてきます。
結果、映像全体が引き締まり、空気感や深みが出ます。

フィルサイド(向かって左側)に白いボードを配置して影を薄くしています。
オーソドックスな見た目という印象です。

光を“足す”より、“引く”という選択

映像制作を始めたばかりの頃は、
「光が足りない=もっとライトを足そう」と考えがちです。
でも、光を足すほど被写体はフラットになり、
陰影の魅力が消えていきます。

実際、映画やCMの現場では、
ライトを追加するのと同等に、どこから光を引くかに多くの時間を使います。

主に黒い布や、黒いボードなどで、フィルサイドの影を作り込んでいきます。
光を“削る”ことで、人物の顔や背景にリズムを作る。
これは、「引き算のライティング」の考え方です。

フィルサイドに黒いボードを配置して影を強調しました。
比較すると影の質感の違いがわかりやすいと思います。
シリアスなシーンなどは、ネガティブフィルを使うと良さそうですね!

ネガティブフィルの具体的な使い方

  1. 光源の反対側に黒を置く
     窓やキーライトの反対側に黒い布やフラッグを立てます。
     反射光を吸収し、影側を落とすことでコントラストが生まれます。
  2. 素材はなんでもOK
     黒いレフ板、布、パーテーション、衣装ラックに黒布をかけるなど、
     現場にあるもので十分。重要なのは“光を吸う面を作る”ことです。
  3. 距離で濃淡をコントロール
     被写体に近づければ影は濃く、離せば柔らかくなります。
     その距離感を調整するだけで印象は大きく変わります。
  4. 人物の位置で演出を変える
     被写体を壁から少し離すだけで、背景に落ちる影の形もコントロールできます。
     光と影のバランスは、ほんの数十センチの位置で変化します。
僕は軽くて使いやすい発泡スチロールに黒い塗料を塗って自作しています。
大体1000円くらいで作れるのでコスパはいいと思います!

ネガティブフィルがもたらす“映像の説得力”

窓からの光を反射しないように、フィルサイドに暗幕をつけて影をしっかりと落としています。
被写体のフィルサイドを黒いもので囲むだけで、質感が良くなるので、覚えておきたいテクニックです。

ネガティブフィルを使うと、
ただ暗くなるのではなく、被写体に重さ存在感が生まれます。

顔の片側に影が入るだけで、
「そこに光がある」と人は自然に感じ取ります。
つまり、影を作ることで光のリアリティが強調されるのです。

また、照明を増やさずにコントラストを調整できるので、
小規模な撮影や自然光ベースの現場でも非常に有効です。

僕自身、限られた照明機材しかない現場では、
まず“どこに黒を置くか”から考えます。
それだけで、画の印象が見違えるように変わるからです。

おわりに

ネガティブフィルは、
派手なライティング技術ではありません。
でも、“影をデザインする”という映像の核心を教えてくれる手法です。

光を足すのではなく、光を整える。
そのために影を作る。

この考え方が身につくと、
どんな現場でも「自然で印象的な光」が見えるようになります。

ネガティブフィルを味方につければ、
あなたの映像はきっと、もう一段深く息づくはずです。

では、また!

Posted byMatsushita